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ふくしま再生の会

<活動報告>

2013年1月

1月26日

●試験栽培した稲の分析結果について

佐須圃場全景(クリックで拡大)
前田圃場全景
(クリックで拡大)
佐須圃場概要(クリックで拡大)
5点法によるサンプル採取
(クリックで拡大)

昨(2012)年、飯舘村の佐須地区と前田地区の田んぼで試験栽培した稲の分析が完了しましたので概要をご報告します。
なお、この試験栽培は、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構(略称:農研機構)との研究協定に基づいて行われ、収穫された籾はすべて農研機構において処分されることになっています。

実施場所

飯舘村佐須地区の菅野宗夫さんの田んぼと、前田地区の伊藤隆三さんの田んぼで稲の試験栽培を行いました。

栽培方法

佐須地区の圃場では除染方法(田車による浅代掻きの回数)を変えた5区画(A、B、C1、C2、D)を設け、区画ごとに土壌中のセシウム濃度が変わるように意図しました。前田地区の圃場でも、同様に除染方法を変えた3区画(A、B、C)を設けましたが、前田圃場ではイノシシ害などにより収量が少なく、区画ごとに測定できるだけのサンプルにならなかったため、全区画をまとめて1区画(IABC)として測定しました。
佐須圃場では、さらに各区画をカリウム増肥を行った区画(区画名に「K」を付けた)と行わなかった区画に分けました。

各区画の概要

区画 面積 カリウム施肥
佐須 A 0.5a 基肥(*1)
AK 基肥+K増施(*2)
B 3.3a 基肥(*1)
BK 基肥+K増施(*2)
C1 1.6a 基肥(*1)
C1K 基肥+K増施(*2)
C2 5.2a 基肥(*1)
C2K 基肥+K増施(*2)
D 1.4a 基肥(*1)
DK 基肥+K増施(*2)
前田 IABC 5a 基肥(*3)
(*1)燐加苦土安3号14-10-8を40kg/10a散布
(*2)塩化カリを20kg/10a散布
(*3)セーフティ基肥10-8-8苦土2を40kg/10a散布

測定方法と結果

(1)サンプル採取

  • 9月15日-16日に糊熟期の稲サンプルを採取
  • 10月6日-7日に完熟期の稲サンプルを採取
  • いずれも区画ごとに5点法(区画の中央1か所、中央と四隅の中間点4か所)で採取しました。
  • 土壌のサンプルは、稲の刈取後に、区画ごとに5点法で0-15cmの土壌を採取しました。

(2)測定法

  • 糊熟期と完熟期の籾を籾すり器で玄米としてそれぞれをGe半導体検出器で測定しました。
  • さらに完熟期の玄米を精米器で白米と糠に分け、それぞれをGe半導体検出器で測定しました。
  • 土壌の測定は、区画ごとのサンプルをよく混ぜ合わせ20ml容器2個をNaI測定器で測定し、2個の平均をとりました。

(3)測定結果

測定結果は、グラフの通りとなりました。

  • 今回の試験栽培で収穫された玄米の放射性セシウム濃度は、いずれも40Bq/kg未満でした。
  • カリウムを増施した区画での玄米の放射性セシウム濃度は、いずれも20Bq/kg未満でした。
  • 白米の放射性セシウム濃度は、いずれも10Bq/kg以下でした。
  • 土壌の放射性セシウム濃度は除染方法によって異なり、2,000Bq/kg~6,000Bq/kgでした。

玄米と白米の放射性セシウム(完熟期)

土壌の放射性セシウム

考察

除染によって土壌中の放射性セシウム濃度が低下するのに伴って玄米の放射性セシウム濃度が低下し、カリウム増施により玄米の放射性セシウム濃度は低下しました。

土壌の放射性セシウムと玄米の放射性セシウム

土壌の交換性カリウム含量が20mg/100gより低下するのに伴って、玄米中の放射性セシウム濃度が上昇する傾向が認められました。

土壌の交換性カリウムと玄米の放射性セシウム濃度

以上から、農地土壌の除染とカリウム施肥といった対策により、玄米の放射性セシウム濃度は低減することが確認され、当該圃場において基準値(100Bq/kg)を下回る玄米の生産の可能性が示されました。

1月30日

●イノシシプロジェクト

捕獲したイノシシ(クリックで拡大)
臨時の解剖台
(クリックで拡大)
イノシシの放射性セシウム濃度
(クリックで拡大)

飯舘村ではイノシシが農地を荒らしているということを、以前にも当サイトで報告してきました。農作物を荒らす野生生物と人間の共存は、原発事故以前からの課題です。
事故後にイノシシが増えているという統計データは確認していませんが、実感としては増えているという人が多い。セシウム濃度が高いために肉が食用に適さないので、イノシシ猟が行われなくなったためと言われています。無人となった飯舘村では、人を警戒する必要がないので、自由に動き回っているとも考えられます。

イノシシは土の中から食べ物をとったり、セシウムが濃縮されるキノコを食べたりするためにセシウムの濃度が高いと言われています。チェルノブイリの事故から25年以上も経つヨーロッパでいまだに基準を超えるセシウム濃度がイノシシ肉から検出されるというレポートもあります。

このように環境の影響を受けやすく、重要なモニタリング指標であるはずのイノシシですが、体系的に放射性セシウムの測定が行われていないように思われます。食品としてのイノシシ肉に関する検査結果を厚生労働省が公表しているデータはありますが(下記【参考】サイト)。

そこで、継続的にイノシシのセシウム汚染状況を測定していくプロジェクトをスタートさせました。東大農学部の協力を得て、解剖と放射能測定を行いました。このプロジェクトにあたって菅野宗夫さんは「イノシシ達の靈を無駄にせず生かす事を誓って」と述べました。食べ物として命をいただくことはできませんが、得られたデータを生かすことによってイノシシたちに報いたいと思います。

分析の結果はグラフのとおりで、部位別に分析した結果、牛や豚の例と同様に筋肉で高濃度のセシウムが検出されました。今回の結果から、さらに調査すべきテーマが出てきました。今後の継続的・体系的な調査が必要です。

イノシシの放射性セシウム汚染状況に関する報告書(PDF 306KB)

【参考】

食品の放射能データ検索

三重大学の奥村晴彦教授による。
「品目」に「イノシシ」と入力して検索すると、イノシシの検査結果が検索できます。

1月30日 報告:菅野宗夫

●放射線講習会

放射線講習会(クリックで拡大)

1月26~27日、見守り隊詰所となっている「いちばん館」において開かれた放射線説明会を大好評のうちに終えることができました。
今回の取組みは、飯舘村からの委託事業である「20行政区全ての生活路線モニタリング」の村民による計測にあたっての説明会で、高エネルギー加速器研究機構の岩瀬広さんを講師に迎えて実施されました。
村の担当者からは、測定員だけでなく村民向けも合わせて実施して欲しいとの要望もあり、企画・準備にあたっては、各行政区の測定員の都合にあわせて4回をセット、再生の会で準備したハツラツと明るく質問する子供の写真入り開催チラシ、岩瀬さんには特に周到な準備をし ていただきました。

説明会は詰所の団欒場所(テレビなどが置かれている場所)で行われ、そのセッテングには見守り隊が進んで協力されてのスタート・・・。
岩瀬さんの講話は手書きの絵を多く取り入れた投影機を使ってのパソコンプレゼンです。
飯舘から避難しなければならないほどの、そして一人ひとりの気持ちをバラバラにするほどの被害をもたらした放射能と放射線(の言葉)についてわかりやすく説明をされ、それがどのように身体に影響するのかその中でのモニタリングの必要性と継続性などについてお話をされ、要所要所での質問を受けながらの講話は、大好評でした。
岩瀬さん、誠にありがとうございました。

今回、この説明会開催は大きな意義を含んでいるととらえて開催致しました。
村委託事業を受けるまでになったふくしま再生の会の活動ですが、委託を請けることよりもっと大きく広く村民に認めてもらい期待される活動、そして村民との協働による再生活動への第一歩となるものと位置づけ開催しました。
科学者から正確に、事故がもたらした放射性物質がどのような形で身体に影響与えるのかを中心に説明をして頂き、精神的にも悪い不安を軽減させてくれた講話でした。
科学者岩瀬さんの手法、話術に感激です。ある行政区からは総会時に講話をお願いしたい旨の申し出もあり、また詰所事務局には、もっと早くから開催がわかるようにして欲しかったなどという隊員からの要望もあったようです。
このような放射線の勉強会を手始めに、ふくしま再生の会活動の多くの試みから得られた成果や実態を村民に伝えることが重要かと思います。

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