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若者の力、シニアの経験を世界の被災地「ふくしま」へ

ふくしま再生の会

<活動報告>

2013年3月

(昨年(2012年)の12月22日・23日と、今年(2013年)の1月12日・13日の4日間にわたって、比曽の菅野啓一さんの牧草地で、転圧後に表土をはぎ取る実験を行いました。遅くなりましたが、岩瀬さんの報告を掲載します)

3月4日 報告:岩瀬 広

●飯舘村比曽地区における牧草地の剥ぎ取り除染

概要

飯舘村比曽地区の牧草地(7アール)において、重機による剥ぎ取り除染を行いました。

作業工程は以下の通りです。(所要時間)

転圧風景(クリックで拡大)
転圧後(クリックで拡大)
  1. 転圧 (30分)
  2. 剥ぎ取り(3時間30分)
  3. 袋詰め(8時間30分)

(1) 転圧

転圧はこの牧草地では必ずしも必要ではありませんでしたが、将来的にいのししに荒らされた田んぼを整地するため試験的に行いまた。
借りたユンボ(ショベルカー)は中型でずっしり重く、転圧前後の地面は見た目にも違いがあり、双方で飛び跳ねて比べてみたくなります。
実際にやってみたところ、転圧後の地面は確かに踏み固められた感があります。また、草が少し伸びていても転圧後は倒れて、はぎ取り作業もし易そうです。短時間で終わるので今後も必要に応じ行程に組み入れてよいと思われます。

(2) 剥ぎ取り

剥ぎ取り風景(クリックで拡大)
剥ぎ取りがほぼ終わった状態
(クリックで拡大)

剥ぎ取りは事前測定の結果から表土5cmを目標としました。
表面部の土壌サンプルには牧草や苔などが混ざります。その量が採取毎に異なるためか、汚染の差が大きかったのですが、それ以外は場所による大きな違いはなく、ほぼ均一の汚染であったと考えられます(下記の測定結果PDF参照)。
ユンボ操作はこの道20年を超えるベテラン菅野啓一さんにやっていただきました。

操作の精度、手際の良さ、段取りの無駄の無さ、どれも抜群で、つい見とれてしまいます。啓一さんの剥ぎ取りは、(1)表土をこぼさない、(2)剥ぎ取った場所にユンボで立ち入らない、が特徴で、後退しながら土壌を剥ぎ取っていきますが、2012年5月に行った実験では極めて高い除染効率を実証しています(報告)。右の写真は剥ぎ取りがほぼ終わった様子です。まるで鏡面仕上げで、土壌が均一に一定の厚みで剥ぎ取られているためです。

(3) 袋詰め

詰め込み作業(クリックで拡大)

剥ぎ取った土壌は業務用の土嚢袋(フレコンバッグ)に詰めました。長期の保存に耐えるよう頑丈なバッグを購入しましたが、一つ7,000円と高価でした。全部で73個の土嚢袋を使いました。
これほどの数の袋詰めは今回初めて行いましたが、手間のかかることは予想を遥かに超えていました。丈夫な袋は買ったとき折り畳まれた状態ですが、それを広げるだけでも一苦労で、多少の時間と筋力を要し、正直一人ではやりたくないと思いました。
広げ方のコツは作業最終日でようやく分かりましたが、中に人が入ってでも四隅をしっかり出すことと、上部余白の部分をしっかり折り返すことでした。広げた袋は4人がかりで口を広げつつ、啓一さんがユンボで土を掬って4、5回くらいに分けて入れました。写真は初日の詰め込み風景ですが、手際の悪さは写真からも分かり、ツイッター上の何人かの経験者がご指摘やご助言をしてくださったほどでした。

剥ぎ取り土壌について

今回除染した土地は7アールで、5cm剥ぎ取りにより土嚢袋73個となりました。剥ぎ取りにより出る土嚢袋は、10アール100個、言いかえれば1反歩100個となります。もし土嚢袋を平積みすると、1000平米の土地に100平米の土嚢袋となり、すなわち元の面積の10分の1が置き場所に必要であるということになります。
飯舘村全域を5cmはぎ取りしてそれを全部土嚢袋に入れれば、平積みで村の10%の土地が仮置き場として必要になるということです。これが剥ぎ取りで出る土の量の目安です。もちろん10段積みや10段埋めにすれば面積としては1%となりますが。
また、今回特に痛感したのが袋詰めの手間でした。もし剥ぎ取りを大規模に行うのであれば袋詰めは現場でなく、剥ぎ取り+ダンプ詰め → 搬送後に作業場にて袋詰め、のように効率化を行うのがよく、そのために作業場所が別途必要だと思われます。
除染土壌は、今後地区の方々とご相談のうえ、恒久的な措置を講じていく予定です。

除染効果

除染の前後における土壌の測定結果は以下のとおりとなりました。

飯舘村比曽地区の牧草地の放射性セシウム汚染 (PDF 286KB)

初日作業後
(クリックで拡大)

この作業に関わった人たちは以下の通りです(順不同)。
菅野啓一、菅野義人、菅野宗夫、伊藤隆三、田尾、大永、野々垣、横田、千田、若林、溝口、登尾、寺島、吉澤、三原、坂本、高村、津田、宇田川、加藤、山本、西森、畠堀、森本、八下田、岩瀬

3月8日 報告:小川 唯史

●「ふくしま再生の会 活動報告会」を開催

看板(クリックで拡大)
会場全景(クリックで拡大)

2月22日、東京大学農学部「弥生講堂アネックス」1階セイホクギャラリーにおいて「ふくしま再生の会 活動報告会」を開催しました。

昨年(2012年)は、

  • 稲の試験作付
  • モニタリングセンターの運用開始
  • イノシシの測定
  • 農地除染土壌の埋却処分試験
  • その他、測定・除染・栽培の各種実験
など、各種のプロジェクトを推進してきました。

4月から始まる来年度において、これらのプロジェクトをさらに発展させていくために、村民の方々や行政のご担当者、専門家・有識者の方々にご意見をお聞きし、ディスカッションすることを目的としたものです。

当日のプログラムと発表資料は以下のとおりです。

プログラム

14:30 会場受付開始
15:10 開会挨拶 田尾陽一(NPO法人ふくしま再生の会・理事長)
第I部 水稲試験作付けと放射性セシウム移行測定
15:05-15:20 (報告と質疑)伊井一夫(再生の会):実験田に作付けした稲の分析
発表資料:実験田に作付けした稲の分析 (PDF 608KB)
15:20-15:30 (提案) 溝口勝(東大「福島復興農業工学会議」):今年の稲作計画案
発表資料:今年の稲作計画案 (PDF 769KB)
15:30-15:45 コメントと討議
第II部 イノシシの捕獲・解剖・放射能測定
15:45-16:00 (報告と質疑)田野井慶太朗(東大大学院農学生命科学研究科准教授):捕獲したイノシシの測定
発表資料:捕獲したイノシシの測定 (PDF 1.4MB)
16:00-16:15 提案・コメント・討議
第III部 飯舘村モニタリングセンターの設立・運営
16:15-16:30 (報告と質疑)菅野宗夫(再生の会理事・いいたて協働社代表):飯舘村モニタリングセンターの設立と運用
発表資料:飯舘村モニタリングセンター 設立と運用 (PDF 1.4MB)
16:30-16:40 (提案)岩瀬広(高エネルギー加速器研究機構):今年のモニタリング計画案
発表資料:今年のモニタリング計画案 (PDF 2.1MB)
16:40-16:45 コメントと討議
16:45-17:00 (全体総括) 田尾陽一(ふくしま再生の会 理事長):ふくしま再生の会今春からの活動計画(案)
発表資料:ふくしま再生の会 今春からの活動計画(案) (PDF 183KB)
17:00 閉会

コメンテーター

  • 三輪睿太郎(東京農業大学総合研究所教授・農水省農林水産技術会議会長)
  • 長澤寛道(東大大学院農学生命科学研究科長・農学部長)
  • 根本圭介(東大大学院農学生命科学研究科教授)
  • 木村武(農研機構本部震災復興研究統括監)
  • 中川喜昭(飯舘村復興対策課長)
  • 菅野啓一(飯舘村村民)
  • 菅野義人(飯舘村村民)
  • ふくしま再生の会会員・関係者

【参考】

発言概要(「かえるくん」によるtwitterまとめ)

ビデオ(YouTube)

第1部 その1

第1部 その2

第2部 第3部

3月9日-10日 報告:小川 唯史

●須萱地区土壌サンプリング予備調査

須萱地区の田んぼ
(クリックで拡大)
サーベイメーターと鉛遮蔽体
(クリックで拡大)

二枚橋・須萱(にまいばし・すがや)行政区は、飯舘村の西端、川俣町から県道12号線で飯舘村へ入る入口に位置する地区です。村内では線量の低い地区で、大倉地区、佐須地区と並んで「避難指示解除準備区域」(推定年間20mSv以下)に指定されています。

飯舘村の除染は国直轄で行われることになっていますが、須萱地区だけは村が国の委託を受けて除染を行うことになりました。大成建設が村から除染作業を受託しましたが、村の振興公社を通じて村民を雇用することが義務付けられています。

除染前の須萱の農地で土壌をサンプリングし、除染後の土壌と比較して効果を測定することにしました。

この週は、サンプリングの計画をするために現地調査をしました。須萱は、両側を低い山に挟まれた谷状の地形で、ここに100枚ほどの田んぼが連なっています。

今回は、土壌のサンプリングと並行して、土壌のベクレル数の深さ分布を現場で簡易に推定できる方法の開発を試みることにしています。その方法とは、鉛遮蔽体とサーベイメーターを使用して、土壌サンプリングした場所で、深さ別に線量を測定し、土壌のベクレル数の測定結果と対照させるというものです。

3月16日-17日 報告:小川 唯史

●須萱地区土壌サンプリング

須萱地区の田んぼ
(クリックで拡大)
採取地点を決める
(クリックで拡大)
ライナー採土器を打ち込む
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サンプルに緯度・経度ラベル
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お堂周辺は除染されていた
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集められた土壌サンプル
(クリックで拡大)

前週に下見していた須萱地区で土壌のサンプリングを行いました。

従来のサンプリング作業は、杭穴を掘るための道具(商品名「アナクール」)を使って円筒状の土を掘り出し、その場で2cm刻みに切り分けビニール袋に取り分けるという方法でした。
しかし、この方法では、かなり慣れた人がやっても1か所のサンプル採取に20分ほどかかります。
今回は、約100枚ある田んぼの土壌サンプリングを、除染作業が始まる前に終えなければなりません。実際には、100枚の田んぼの中からいくつかを抽出して調べるとしても、上記の方法ではかなり時間がかかることが予想されました。
また、採取したサンプルと採取地点の対応関係に間違いがないようにしなければなりません。

●採取方法の技術革新

そこで今回は、「ライナー採土器」という土壌サンプリング専用の道具を使い、採取地点を記録するために、GPSを使用しました。
その手順は以下の通りです。

  1. Google Mapで須萱地区の田んぼ地図をあらかじめ作成しておく
  2. 測定対象とする田んぼを4枚に1枚とする
  3. 1枚当たり5か所(中心点1か所、四隅と中央の中点4か所)から採取する
  4. 対象となる田んぼの畔に目印となるポールを立てる
  5. サンプルを採取する5点にポールを立てる
  6. ライナー採土器にプラスチックケースを装填し、採取地点に打ち込む
  7. ライナー採土器を引き抜き、土壌が入ったプラスチックケースを抜き出す
  8. プラスチックケースにフタをし、ビニールテープでとめる
  9. 採取地点名とGPSで測定した緯度・経度をラベルに書き込みケースに貼る
  10. ラベルを貼ったサンプルをGPSカメラで撮影する

緯度・経度をラベルに書いたうえに、さらにGPSカメラで撮影するのは、データの書き間違いをチェックする意味と、GPSデータの検証を行うためです。
この方法で、現場での採取作業はかなり効率化され、2日間で約100地点のサンプルを採取することができました。
ただし、これは現場で2cmの厚さに切り分けて袋詰めするという作業を省略したためでもあり、その作業は測定チームに回されたということでもあります。
2cm厚に切り分けて測定用のケースに詰めるという作業が測定チームの分担となりますので、測定チームの作業効率化と作業者の確保が重要になってきます。

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