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若者の力、シニアの経験を世界の被災地「ふくしま」へ

ふくしま再生の会

<活動報告>

2013年7月

7月25日 報告:森本 晶子

●ふくしま再生の会の植物への取り組み

2011年の夏、「ふくしま再生の会」が菅野宗夫さん宅を拠点として、手探りで除染実験を始めてから約一年後。2012年の夏あたりまでに、村内全域の放射線量測定や限定した地域の除染の試みなど、様々な活動がなされて来ました。初めの一年間で、「ふくしま再生の会」のこの面での技術の進歩と知見は、格段に増加したと思います。

植物に関しては、初めのうちどの植物が放射能の除染に有効かという観点から、除染に有効と言われる様々な植物を、条件を変えて植えてみたりしましたが、こちらの体制が整わなかったり技術不足により、満足する結果が得られたとは言えません。

●植物測定のはじまり

この間、地域の方に頼まれたものや、気になる植物の放射能を、その都度測定してきましたが、その中でわかってきたことは、年を追うごとに放射能が下がって行くことと、コケ類やキノコ類の放射能が他の植物と比べて特別高い値を示すということです。

そこで活動開始後一年が経った昨夏、地域に生えている様々な植物が吸収している放射性セシウム量が、どう違うのかを調べてみようということになったのでした。

飯館村の山津見神社に行った際に、近くに栽培されていたリンドウの花が美しく咲いていたので、もし今この花を商品化するとしたらと考え、どの程度の放射能を含むのかに興味を持ったので、測定用に花を採取しました。

ついでに、近くに生えていた何種類かの雑草も採取して、比べてみることにしました。また、これらの植物が生えていた土壌の放射能との関係を見るために、表面から5㎝ほどの土を一緒に採取し、植物の映像や採取場所が分かるような記録写真も撮りました。

●植物グループの採取ガイドライン

その後、採集とまとめに主としてかかわる固定メンバーが3人になり、放射能測定グループの意見も聞いて、植物班としての今後の計画や見通しについてなど、話し合えるようになりました。

そこで、それまで統一されていなかった「植物採取の際の注意」が、以下のように決まりました。

  1. 採取した植物を入れる紙袋の風袋(添付ラベル込)の重量を測定する。
  2. 地上に出ている部分を採取し、そのまま紙袋に入れる。
  3. 食用にするものは、食用部分を採取。(根の泥は洗い流す)
  4. 採取量は、100gから150gを目安とする。乾燥・粉砕して20mlバイアルに2本分
    (乾燥すると重量はほぼ1/10になる)
  5. 採取場所の地上10㎝放射線量と採取時の正味植物重量を測定する。

植物の採取については、主として宗夫さんの住居周辺を中心に、経年変化を見るものに加え、食べられる植物(ウド、フキ、ワラビ等)の種類を増やすことと、特に放射性セシウム濃度の高いコケ類の種類を増やすことなどを考えています。

初めのころにやっていた土壌の採取に関しては、植物によって根の張り方も違うので、一律の深さで取る意味が無いということで、当該植物が生えている地面上10cmの空間線量だけを、参考資料にすることにしました。

●測定結果の中間報告

将来はこれらのデータを一つにまとめて、データベース化したいと考えていますが、今までに採集した植物の、現時点で分かっている測定データを、途中経過として以下に示します。

(ページの一番下にある「測定結果の概要」を参照してください。)

●とびぬけて高いコケ

見ての通り、コケの放射性セシウム濃度が、他の植物と比べると、飛びぬけて高い結果が出ています。なぜコケに放射性セシウムが濃縮されるのかというと、栄養素としてカリウムの摂取が不可欠であるコケが、化学的な性質が似ているセシウムをカリウムと間違えて取り込んでしまうからだと思われます。

自然界での水の循環という視点で見ると、コケは雨水や山林から川や田んぼへと流れ込む水から放射性セシウムを漉し取るフィルターのような働きをしているようです。

●コケは除染に使えるか

したがって、除染にコケを利用することは有用に見えます。それで、比較のために多様な種類のコケの採取をしたいと思っていますが、困ったことに他の植物と違って、コケの場合、似たようなものが多いので、名前の同定が難しいのと、土と一体化しているので、土から分離して苔だけの放射能を測定するのが難しいのです。

A1 物干しポール下のコケ

A1 家の裏軒下のコケ

A1 物置裏側溝側面のコケ

A2 橋の両側のコケ

A2 道路脇のコケ

B3 コケA

B3 コケB

B3 コケC

B3 コケD

ただし、土がついたままの状態で放射性セシウム濃度が高いということを、除染という観点でみると、苔を土ごと剥ぎ取れば除染になるのではないかと思われます。

●今後の計画

まだまだ、データを蓄積してゆく端緒についたばかりなので、これからは、植物の種類による違いとともに、同じ植物やコケでも、空間線量が異なるところではどう違うのかとか、それぞれの場所で、食べても大丈夫な植物は何か、などについての知見を、追加的に得て行きたいと思っています。

また、植物を採集していくうちに、飯館村の樹木や野草の花々が豊富で、私が住む大阪では山に行かないと見られないような花が、平地で多数見られるということがわかって来たので、飯館村の四季折々に咲く花たちを写真で紹介もして行きたいと思います。

シドケ(シドキ)

コゴミ

コンフリー

ウド

ウドの花

アキノウナギツカミ

タニソバ

ゲンノショウコ

●測定結果の概要(報告:伊井一夫)

図1 飯舘村佐須地区で採取した植物の放射能
(Bq/kg 生重量:2013/05/18~06/11採取。参考値として尾瀬のデータを追加)

図2 飯舘村佐須地区で採取したコケの放射能
(×10,000Bq/kg 乾燥重量:2012/08/19~2013/06/08採取)

図3 (参考)尾瀬で採取したコケの放射能
(Bq/kg 乾燥重量:2013/06/11採取)

図1

飯舘村野草の放射性Cs濃度は、生重量当たりの放射能で示しています。A、Bは採取した場所を示します。測定した野草はすべて200Bq/kg以下でした。

高めなのは、ヨメナ(190)、タラの芽(160)、ツルニチニチソウ(126)、ヒメオドリコソウ(119)、ウド(117)で、あとヨモギ、ノブキ、ミツバ、コンフリー、コゴミ、ギシギシ、ヤブカンゾウ、マツバギクと下がり、いずれも100Bq/kg以下でした。

参考値として尾瀬で採取したコシアブラは、葉が72Bq/kgで、茎が26Bq/kgでした。低いですが、尾瀬でも野草のCs汚染が観察されました。

図2

コケの放射性Cs濃度(2012/8/19-2013/6/8採集)は、乾燥重量当たりのデータです。

コケの放射能は、他の植物と比べて、桁違いに高く、単位が、万Bq/kgであることに注意してください。5万から115万Bq/kgの範囲にありますが、これまでのデータからコケの生えている土壌や樹皮表面の汚染度に大きく依存していると思われます。

B3では、採取時期が昨年の8月、11月と変わっても、またコケの種類(同定できていない問題はあるのですが)が変わっても、30万から40万とあまり変わっていません。

今年の4月に採取したものでは、59万とむしろ上がっていて、コケが土壌表面のCsを吸収、濃縮すると思われます。

A1では、掃除や除染をしたところでは6万と低くなっていますが、除染をする前の物置裏溝側面のコケは、60万と高い値です。

コケは、土壌表面と密着しているため、採取の時に混入する土壌のために、高い可能性も考えられます。

そこで、A2道路脇のコケeについて、乾燥後、篩で、土壌とコケ本体を分離して、測定したところ、篩の上のコケ本体が多いほうが、篩下の土の多い分画よりも、放射能が70%も高く、コケ本体に土壌よりも高くCsが濃縮されると推測されました。

また、A2牛舎への橋の両側のコケdについては、コケ全体を採ったもの(土壌も混入する)と 地上部だけを採ったものを比較したところ、地上部だけのほうが、放射能が50%低くなりました。地上部よりも地面に接している部分にCsが多く蓄積していることが考えられます。

図3

尾瀬の帝釈山付近のコケの放射性Cs濃度(2013/6/11採取)は、飯舘村のコケの濃度と比べると低く、1,700Bq/kgでした。コケについている土(コケも混ざって、分離は完全ではない)は、820Bq/kgで、混入する土より、コケ本体の放射能が高いと考えられます。

尾瀬でも、コケは他の植物(コシアブラ)と比べると、放射性Cs濃度が高く、コケは、放射性Csの表面汚染を知るよい手がかりになると思います。

さらに、コケは、土壌表面や樹皮のCsを内に取り込んで、濃縮すると考えられるので、増えたコケを剥ぐことは、表面の除染に有効と思われます。

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