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若者の力、シニアの経験を世界の被災地「ふくしま」へ

ふくしま再生の会

<活動報告>

2013年5月

5月3日 報告:八下田 好一

●放射線モニタリングコースナビ

コースマップ
(クリックで拡大)
立ち寄り値設定時画面
(クリックで拡大)

1.目的:

現在「モニタリングセンター」事業として行っている村内の放射線モニタリングは、各行政区の住民の方が測定員となって測定を実施しています。このほかに、再生の会でも独自に、月1~2回のペースで、高性能車載モニターを使って全村モニタリングを行っています。

村内の測定は村内を自動車でくまなく回ることを目的としてコースが作られています。このため、ルートが複雑で、なかなか一人では周ることが難しく、現状はナビゲータと2人組で走行しています。しかし、それでも時々ルートを間違えたりしている状況です。ここにカーナビを導入して省力化することを目的とします。

2.方法:

現状では測定専用車両を固定できるめどが立っていないので、持ち運びのできるポータブル型を利用します。飯舘村ではGPS電波を遮蔽するような高い建物、障害物は極小であるため、GPSのみによる測位でも十分な性能が見込めます。

ナビアプリには、立ち寄り地(中継地)を登録し、意図したルートに沿ってガイドを行う機能があります。この機能を利用し、走りたいコースになるように事前にルートを登録しておきます。

日本で販売されているナビデバイスでは、多いものでも立ち寄り地登録は1コース辺り5地点までです。今回はこういった機能を持つポータブルナビゲーションデバイスを利用します。

現在、赤・緑・青の3つの測定ルートが設定されています。これを立ち寄り地が5地点以内に収まるように、各コースを細分化します。

3.結果:

5月3・4日の両日、2台の車で赤・緑・青コースを走行実施しました。赤コースはナビを搭載し、試験的に入れたガイドデータで実際の道路状況との突合せを行いました。

<問題点>

  1. コース中にUターン指定が多々ある。行き止まりの場所は問題ないが、道路上のUターンはナビアプリのアルゴリズムではマッチしない。
    走行上の危険も考えるとUターンではなく、コースをループ状に設定する必要がある。それも細かく廻すと音声案内が間に合わない(草野地区・飯樋地区で顕著になると推測)ので、大きく回り込む事を意識するルートに。
  2. ナビに登録のない道路を走行する。ナビの道路データは走行可能なすべての道路が登録されていないので、それを考慮したルートへ変更する必要がある。
    あるいは特例として走行することをドライバーが判断しなければならない。(一部ルートの削除あるいはUターンコースへの変更)
  3. ルートごとのバランスが悪い。赤ルートは1日半でも難しいが、残りは1日で回れる。特に赤コースの一部を青コースに組み込んだ方が良いだろう。

4.今後の予定

  • 今月中に上記改善点を考慮してルートを再編集し、そのデータをナビに入力。
  • 6月の早い時期に持ち込み、再度走行を行い細かな修正を加える
    →実用化へ

5月21日 報告:小川 唯史

●平成25年度の稲の試験栽培について

1.目的:

昨年度は、佐須と前田で稲の試験栽培を行いました。その結果については、以下の資料をご覧ください。

これらの結果から、カリウムの施肥により放射性Csの玄米への移行を抑制できること、また土壌のCs濃度が低減するのにともなって玄米への移行が低減することが確認できました。
これらの結果は、福島県内で実施された他の試験栽培の結果ともよく一致しています。

一方、福島県内の試験栽培では、カリウムを施肥した環境で栽培した米からも、少数だが高めのCs濃度(はずれ値)が検出される場合があるという報告があります。
また、佐須では土壌中の放射性Cs濃度が村内では比較的低く、より高い濃度の土壌における栽培についてはわかりません。

このように、まだまだわかっていないことがたくさんあります。
さらに実験を重ねて放射性Csの稲への移行を確実に抑制するためのデータを得ることを目的として、今年度も稲の試験栽培を実施します。
この試験栽培は出荷を目的としたものではなく、栽培条件をコントロールしながら放射性Csの稲への移行を確実に抑制する方法を確立するための実験です。

今回の実験の目的は、以下のようにまとめることができます。

  • 農家が自分のトラクターを使って除染できることを示したい
  • 「代かき-泥水排水-泥水浸透-埋設」という一連の作業で除染を完結できることを示したい
  • 初期濃度の異なる水田で試験作付し、米へのCsの移行を観察したい

昨年度は佐須の菅野宗夫さん、前田の伊藤隆三さんとともに試験栽培を行いましたが、今年度は、このほかに小宮の大久保金一さんとも組んで試験栽培を実施することになりました。

実験は、農業の再生に意欲を持った農家の方々と協力し、話し合いながら実施しています。
主体は地元の農家の方々であり、われわれはその技術的サポートを行っていきます。

2.方法:

泥だめの溝(クリックで拡大)
トラクターで耕起
(クリックで拡大)
3区画に区切る
(クリックで拡大)
水をはる(クリックで拡大)

昨年度は、田車による浅代かき除染法の開発や除染土の埋設処理方法の開発など、除染と栽培の方法を試行錯誤しながら実験を推進してきましたが、今年度は昨年度の経験から、より体系的に実験を計画することができます。

<浅代かき除染の長所>

昨年度実施した「浅代かき除染」(再生の会における別名「田車除染」)についておさらいしておきましょう。
浅代かき除染の原理の解説は、2012年4月の活動報告をご参照ください。
浅代かき除染法は、剥ぎ取り法ほど劇的な低減は期待できませんが、以下のような長所があります。

  • 代掻きと掃出しの回数で除染の「強さ」を調整できる
  • 肥沃な土壌成分を残しながら除染できる
  • 身近な農機具のみを使って少人数でも行える
  • 繰り返し実施できる

以上の長所は、今回のような試験栽培においては特に有効です。除染の「強さ」を調整することにより意図的に放射性Cs濃度の異なる土壌の区画を作ることができるからです。このことは同時に、肥沃な土壌層をどれぐらい残せるかということにも対応しています。

<除染方法の変更>

今回の実験も浅代かきによる除染を採用する予定でしたが、実際の圃場を見て、浅代かきではなく、通常の代かき+強制掃出しという方法に変更しました。
雑草が根深く茂っており、また表面も凸凹で、トラクターで表面5㎝を耕起して代かきすることが困難と判断されたためです。
これは、現在、村内の多くの農地で見られる状況です。雑草に覆われ、イノシシに荒らされて凸凹になった農地が数多くあります。こうした荒れた田んぼに対して、代かき除染がどのように機能するかを調べることにも意義があります。

今回の試験栽培では、圃場を畔シートで3つの区画に区切り、(A)代かき+強制掃出し3回、(B)代かき+強制掃出し1回、(C)実施せず、という異なった除染条件としました。またそれぞれの区画で、カリウム増肥の有無という条件の違いを設定しました。
まとめると、以下の表のようになります。

区画 除染 施肥
A (代かき+掃出し)×3回 基肥+珪酸カリ(土壌改良剤)
AK (代かき+掃出し)×3回 基肥+珪酸カリ(土壌改良剤)+カリウム
B (代かき+掃出し)×1回 基肥+珪酸カリ(土壌改良剤)
BK (代かき+掃出し)×1回 基肥+珪酸カリ(土壌改良剤)+カリウム
C 実施せず 基肥+珪酸カリ(土壌改良剤)
CK 実施せず 基肥+珪酸カリ(土壌改良剤)+カリウム

<作業の手順>

代かきして掃出し
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テニスコートブラシを活用
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掃出された泥
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泥だめの測定器
(クリックで拡大)
カリウム施肥(クリックで拡大)

田植え前の実際の作業手順は以下の通りです。

  1. 実験圃場(縦15m×横34m)に茂った草を刈ります
  2. 実験圃場の一部に穴(縦15m×横5m×深さ75cm)を掘ります。この穴は、代かき除染によって発生する泥水を流し込むための泥だめです
  3. 穴を掘る際に、表面の土壌は汚染されていますので5㎝ほど剥ぎ取り脇へどけておきます
  4. 5㎝より深い層はきれいな土壌なので、あとでこれを上からかぶせる(覆土)ために使います。先ほどの土とは別に積んでおきます
  5. 穴の地表面上と地下40cmの深さに放射線計を設置します
  6. 最初に剥ぎ取った5㎝層の土壌を穴に入れます
  7. 穴の縁に非汚染土で畦畔を作り、その一部を排水路用に切り崩して土嚢を積んでおきます
  8. 穴以外の実験圃場(縦15m×横28m)を15cm程度耕起します
  9. 除染区画を畔シートで3区に区切ります(1区=縦5m×横28m)
  10. 水をはります
  11. 15㎝程度の深さで代かきします
  12. 1区をトラクタで2回往復し、最後に戻る時にトラクタで長さ4.5mほどの丸太を引きずります。丸太と畔シートの隙間をテニスコートブラシで塞ぎながら泥水を押し流します
  13. 排水路の土嚢をはずして代かきで舞い上がった泥を水ごと掃出し、泥だめ穴に流し込みます
  14. 区画ごとに代掻きと強制掃出しを計画の回数だけ繰り返します

<泥水の処理方法>

泥だめにためた泥水の水分は、今後、浸透と蒸発で減っていき、最後に放射性Csを吸着した粘土成分が残ります。
この状態になったら、穴を掘ったときに出たきれいな土壌をこの上からかぶせます。

各種の研究により、Csは土壌中の粘土成分に吸着して離れないという性質があるため、泥水の水分が土中に浸透しても地下水にCsが流れ出すことはないと考えられています。

実際に、昨年度の実験で予備的に得られた結果については、以下の資料を参照してください。

このことをさらに確認するために、土中に放射線モニターを埋め、放射線の変化を常時監視します。

同様の監視は、佐須の実験圃場で継続して行っており、雨が降った後にも放射線の変化は観測されていません。現在も継続して監視中です。
小宮でも、今後長期間にわたって継続的なモニタリングを行っていきます。

【動画】代かき除染法(泥水の掃出し)

【動画】代かき除染法(泥水の掃出し)その2

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